思った通りに走れて運転が楽しい! 乗り心地までアップ
今回マツダが公開した新技術は
・長時間の運転でも疲れにくく
・乗員全員の乗り心地がよくなり
・ドライバーの思ったとおりに走れ
・雨や雪道での安定感が増す
という効果があるという。
エンジン、シャーシ、ボディ、トランスミッションというクルマの主要な構成要素。その効率を可能な限り高めつつ、基本的な性能を底上げするのが「スカイアクティブ・テクノロジー」だ。マツダはこの「スカイアクティブ・テクノロジー」を各構成要素に採用し、現在成功を収めている。そのマツダがさらに「攻めた」技術を発表! それが「スカイアクティブ-ビークル ダイナミクス(SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS)」だ。個々の構成要素の性能を高めるだけでなく、それらを統合制御するという考え方の総称である。
今回発表されたのはその中の「G-ベクタリングコントロール(G-Vectoring Control)」という技術。これはエンジンでシャーシ性能を高めるという世界初の試み。ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを自動的に変化させ、4つのタイヤの接地荷重を安定させるという。
効果としては、よりドライバーの思ったとおりにクルマが動き、安定感が増すため雨のや雪道でもより安心して走れるようになる。さらに滑らかにGが発生するようになるため、乗員の身体の揺れが減り、乗り心地も増すのだ。
実際には、ブレーキを踏んだときのように前のめりのとき、フロントタイヤの接地荷重が大きくなる。この状態だとハンドルを切ったときの応答性がよくなる。一方加速時のように後ろ下がりのときはリヤタイヤの接地荷重が大きくなり、後ろが安定する。
そのためカーブに入るときはエンジントルクを減少させてフロントタイヤの接地荷重を大きくすることでクルマの向きを変えやすくするのだ。コーナーリング中はエンジントルクを復元させてリヤタイヤの接地荷重を増し、安定したコーナリングを保つというもの。例えばレーシングドライバーなどはアクセルやブレーキペダルによって接地荷重をコントロールし、タイヤの性能を目一杯引き出す。これは相当な高等技術である。「G-ベクタリングコントロール」は、まるで運転技術の高いドライバーのように、自動で荷重移動をコントロールしてくれるのだ。
じつは運転していると誰でも、路面のギャップやうねりなどによって、無意識ながらも常にハンドルを細かく修正している。「G-ベクタリングコントロール」はそうした修正も減少してくれるのだ。ステアリングの修正は長時間運転しているとドライバーに疲労として蓄積される。それも減少してくれるのだ。
そんな技術を搭載したクルマに実際試乗したモータージャーナリストの五味康隆氏。試乗を終えた直後にインプレッションを語ってもらった。
「効果は非常に大きい。あくまで自然だけどとても良く曲がるクルマになった印象を受けた。簡単にいえば太いタイヤを履いたようで、フロントのグリップが上がって応答性が良くなったのと同じ感覚が得られる。それでいて、コーナリング中は自然な状態に戻るので安定性も十分。コーナーへのターンインではショートホイールベースになって、コーナーの中ではロングホイールベースになるような感覚といえばわかりやすいだろうか」
「驚くのは直進時でも効果が得られるところ。路面のわだちやギャップでタイヤが『曲げられる』力が加わると、ステアリングを真っ直ぐに保持するために逆方向に力を込める。するとわずかな前後荷重移動が自動的に起こるため、あまりステアリングを修正しなくても真っ直ぐ走ることができる。要は直進安定性が上がる印象だ。いつも走っている凸凹のある道が、フラットな道のように感じられる。当然乗員が前後左右に揺すられることが減るので乗り心地がよくなるというマツダの説明にも納得がいく」
「このシステムが行う操作は非常に緻密で、1000分の4秒(ディーゼル)、1000分の5秒(ガソリン)でステアリングの転舵における角速度をセンシング。エガソリンエンジンの場合、燃料噴射、点火、空気の流入のいずれかを状況に応じてコントロールしてGを発生する。システムが発生させる減速Gは通常わずか0.01Gしかないのだが、前述のとおり効果は絶大だ。」
「正直に言うと、どんなに上手いドライバーが丁寧に操作してもこのシステムには敵わない。アクセルペダル操作からエンジンが反応するまでの時間もかかるし、もし髪の毛一本のようなストロークでペダルを操作してもエンジンはそこまで細かく反応してくれないからだ。
ボクは、システムが作動している感はまったくなく、単に運転が上手くなったように感じるこの新技術が、可能な限り早く、多くのクルマに搭載されればいいと思う」
※「 」内のコメントはすべて五味康隆氏
元レーシングドライバーの五味氏に「敵わない」と言わしめる「G-ベクタリングコントロール(G-Vectoring Control)」。続報を期待して欲しい。