重量区分ギリギリだと数値がガラリと変わる
今回の騒動で、一気に話題になったJC08モード。カタログでもほぼこのモードによる燃費数値が使われているので、お馴染みではある。しかし、その内容となると今ひとつわからないのではないだろうか。
燃費基準は10モードや定速度など、時代によって進化してきた。JC08の前は10・15モードで、測定自体はJC08と変るところはない。ではなにが変っているかというと、目指すところはまず「より実際に即したモードで測る」ということ。カタログと実燃費の大きな乖離が指摘されていたことが、2011年4月からJC08モードへと切り替わるきっかけになった。
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燃費試験の方法は、さまざまな使用シーンを想定した速度や走行パターンの指示に基づいて、シャーシダイナモの上に車両を乗せて測定。その車両自体を運転をするのは人間で、秒単位でパターンを変えていくので、職人的な試験官が担当する。
パターン自体は10・15モードのときよりも複雑化かつ、長時間化されていて、ここで細かく紹介できるものではないのだが、大きな違いとして「冷えた状態から試験を始める」「より高速域に対応したモードを導入する」というふたつがある。とくに前者は10・15モードでは暖機してからの測定だったから、非常にシビアになっている。
またよく聞かれるのが重量区分だ。これはシャーシダイナモに付けるオモリを選ぶ基準で、これによって転がる抵抗に差が出るのだが、そもそもなぜそんなことをしているのか? すべてのクルマが同じ条件で測ればいいのでは、と思うかもしれないが、簡単に言えば、絶対的に重量が重いクルマは、確実に不利になってしまうからで、そこを補正する意味がある。
ただし、重量区分ギリギリだと数値がガラリと変わるし、区分から大きく離れていると、メーカーとしても燃費対策のやる気が失せるともされていて、客観的なものかというと、疑問はある。考慮されるのはこれだけではない。最近では省燃費のために空力にこだわるが、ただ重量によるシャーシダイナモの抵抗設定だけでは、空力は意味がない。そこで、実際の走行抵抗を測定して国に届け出て、それを元に補正され試験がなされる。今回の不正はこの部分で行なわれている。
走行抵抗を測定するのは各自動車メーカーで、方法としては惰行法という方式が使われるのだが、これはある速度から減速に何秒かかるかを見るもので、早ければ抵抗は大きいし、遅ければ抵抗は小さくなるのは、当然のこと。
だから、抵抗を小さく計算して届ければ、その分試験結果、JC08モード燃費は良くなってしまうのだ。簡単に言えば、抵抗を小さく見せていたわけだ。惰行法は屋外で行なうこともあるが、JC08届け出用には、シミュレーションによるものを出しているようで、何度も演算して、その中央値から届け出の数値は導き出させるため、結果にブレはないように思えるし、実際にそうだろう。
ここで三菱は、高速惰行法を使用していると報道にあるので、高速部分での数値をいじっていると推測される。
燃費基準については、批判が多いものの、実際の走行に合わせた現実的かつ客観的な数値にするのは非常に難しい。それゆえ、人為的に手を加える余地が出てきてしまうとのもまた事実だけに、こういった問題はなかなかなくならないだろう。