FFスポーツならルノーが世界一
ルノーおよびルノー・スポールは、今やFFスポーツカーを造らせたら右に出る者はいない。今回、ルーテシアGTとルーテシアR.S.(ルノースポール)トロフィーを試乗して、その思いが強くなった。
ルーテシアはBセグメントのコンパクトカーなのでさほど贅沢な造りではない。フロントがストラット、リヤがトレーリングアームのサスペンションでダンパーも可変式ではなくコンベンショナル。むしろシンプルなシャシーといえるのだが、高速道路やワインディングを駆け巡っていると、そのサイズ以上の重厚感があり、操縦安定性と乗り心地がじつに高い次元で両立されている。
R.S.はモータースポーツ部門が開発するスペシャル・モデルで、従来はストリートをメインとしたシャシースポール、サーキットまで意識したシャシーカップの2種類があったが、さらにその上をいくトロフィーがシャシーカップにとってかわる存在となった。従来比でフロント20mm、リヤ10mm車高を落とし、ダンパー減衰力は40%アップされているというから乗り心地はさぞ硬いのかと想像していたが、まったく悪くない。低速域では引き締まった感覚だが、高速域ではフラットで快適。
一方、GTは標準モデルのスポーティバージョン。だからソフトタッチではなく、R.S.トロフィーと同じようにフラットライドではあるが、大きな段差を超えたときなどの突き上げが優しく、さらに快適だ。
ワインディングでもGTはルノーらしいハンドリングをみせる。ロールやピッチングが抑制されてFFとは思えないぐらい俊敏な回頭性をみせるが、決して硬く突っ張った感覚はなく荒れた路面にも強い。どんな場面でも安心して攻め込んでいけるのだ。ただし、サーキット的な走りに挑むとロールが深くなりトラクションコントロールが働いて、もどかしい思いをするようになっていく。
それに比べるとR.S.トロフィーはロール剛性が高く、フルバンプ手前で粘りを発揮してくれるHCC(ハイドリック・コンプレッション・コントロール)も効いているのでトラクションコントロールの作動が遅い。
さらに専用のレースモードを選択すればESC解除となるので、激しい走りにどこまでもついてくるのが興奮モノだ。100psも違うエンジンパワーも武器で、上手く操ればアクセルオンでフロントから引っ張らせて旋回力を増していくハイパワーFFならではの走りも楽しめる。
いずれのモデルも奥深いシャシー性能のもち主で、スポーティなドライビングが大好きなひとなら、たとえFF嫌いでもきっと虜になるはずだ。ワインディングを適度に楽しむならGTで十分だが、腕に覚えがあるならR.S.トロフィーがオススメだ。
(撮影:大西靖)
〈ルノー・ルーテシアGT〉
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