終始一貫して「余裕」のクルージング
まずは注目のディーゼルエンジンを搭載する「XF 20d PRESTIGE」(車両本体価格:693万円)から試乗。2008年よりインドのタタ・モーターズ傘下となったジャガー・ランドローバー。XFとXEに搭載される新開発のディーゼルエンジン「INGENIUM(インジニウム)」は、同社が設計から生産までを手掛けている完全オリジナルのエンジンである。
可変ターボ(VTG)で過給することで最高出力180ps/4000rpm、最大トルク430N・m/1750-2500rpmを発生。最大トルク値に関しては後述する3リッターV6スーパーチャージド・エンジンの450N・mに匹敵するレベルであり、スペックを見ただけでも余裕のある走りが想起される。
実際、市街地から高速道路までどんなシチュエーションでも一貫してトルクフルな走りを味わわせてくれる。全長×全幅×全高=4965×1880×1455mmという堂々たるサイズでありながら、取り回しも楽で大きさや重さはまったく気にならない(試乗車の車重は1760kg)。
ディーゼル特有の「ガラガラ音」も徹底して抑えこまれているようで、優雅なスタイルと車格を損なうようなことはなかった。ディーゼル最大の恩恵にあずかるのは、やはり高速クルージング時だろう。100km/h巡航時のエンジン回転数はメーター読みでたったの1300rpm程度。クロスレシオの8速ATを搭載することもあり、合流や追い越し時には十二分な加速が得られる。
今回の試乗は、愛知県名古屋市中心部から三重県志摩市の賢島を往復するルートで、総走行距離は400km以上にも及んだ。途中、ワインディング路も通過したが、ジャガーXFはこういったシーンでのハンドリングにも目を見張るものがあった。
一般道および高速道路では上質な乗り心地のサルーンといった風情。しかし、タイトターンが連続するような峠道になると一変、ステアリングを切ることが俄然、楽しくなる。全車に搭載される「Jaguar Driveコントロール」は、スイッチ一つで「ウインター」「エコ」「ノーマル」「ダイナミック」と好みの走行モードに切り替えが可能。トランスミッション制御やエンジンレスポンスが最適化される。
もっともスポーティな「ダイナミック」モードを選べば、アルミモノコックならではの硬質なボディとしなやかなサスが織り成す、奥行きのあるハンドリングが楽しめる。とはいえ、「ノーマル」モードでも十分にしっかり感があり、低速トルクが豊富なディーゼルエンジンの優位性も手伝い、優雅かつ華麗にコーナーを駆け抜けることができる。このあたりの絶妙なさじ加減は、伝統ブランドたるジャガーならではと言っていいだろう。