【現地後送】F1GP2016開幕オーストラリアの波瀾万丈を振り返る
ホンダのデプロイは問題無し、次はライバルと闘える!?
【現地直送】マクラーレン・ホンダの実力は現時点でどれほどなのか?の最後に、『レースはいつも、表面に見えていることだけではないなにかが起きることになっている』と書いた。その通りの展開だった。これだからモーターレーシングは面白いのだ。
まぁ正直に言うと、そうでも言わないとへたり込みそうなクソつまらない予選だったからなのだが。なんといっても、Q3の最後のチェッカードフラッグが降られた時に、誰もコース上を走っていなかった。あまりの酷さに反省した(?)FIA(国際自動車連盟)は、第二戦のバーレーンGPから、新方式の予選を辞める決定をした。さすがF1、判断が早い。だったら最初からやるなよ、という意見もあるけれど。
さて、今回の開幕戦をダイジェストで振り返ると、もう、F1から目が離せないことになりそうだ。早速フジテレビのCSを契約するように。CSに契約したくないムキは、フェイスブックの[STINGER CLUB]のメンバーになると、ただで、リアルタイムの情報を読むことができる。ただし、タイトルに『リアルタイムメモ』とあるように、単なるメモ的ではあるけれど。
ともあれ、2016F1GP開幕戦のオーストラリアGPは波瀾万丈のレースだった。
◆フェラーリのスピードアップはホンモノだ!!
スタートでベッテル+フェラーリ がダッシュを決めてフロントローからスタートしたメルセデスの前に出た!! 慌てたハミルトン+メルセデスが1コーナーで姿勢を乱してロズベルグも同調したようにスピードが鈍って、予選4位のライコネン+フェラーリまでメルセデスをパスしたからたまらない。フェラーリの1-2、夢かと思ってほっぺたをつねることさえ忘れるくらいに興奮する場面が現実として展開した。
フェラーリのお膝元のイタリアでは暴動が起きるのではないかと心配になったくらいだ。もっとも、終わってみればトップ3は予選と同じロズベルグ+メルセデス、ハミルトン+メルセデス、ベッテル+フェラーリだったが、終盤、タイムが出にくい一番固いミディアムタイヤを装着して、タイヤ交換を2回で忍んでいたことでタイヤが辛くなったハミルトン+メルセデスを、1回多いタイヤ交換の作戦で柔らかめのソフトタイヤを履いていたベッテル+フェラーリが追い詰めて、オーバーテイクが期待された。
しかし、ベッテルのタイヤも寿命が来ていた。残り1周、ハミルトン+メルセデスの背後に迫っていざ追い越しか、というところでベッテルはオーバーランしてコースをはみ出した。万事休す。メルセデスを許した。
レースにもしもはないけれど、少なくともフェラーリはメルセデスに大きく近づき、ベッテルもちろん、パワーユニットが原因でリタイアしたキミ・ライコネンも、そしてチームのモチベーションはハイレベルであることが証明された。
ちなみに、ベッテル、4年連続ワールドチャンピオンを取りながら、“そりゃ、レッドブルが速かったからだ”とレッテルを貼られていたが、今年はさらにもう一段、逞しさを増したことがメルボルンで見て取れた。フェラーリに移って正解、である。
◆激しいアクシデントで赤旗。原因はマクラーレン・ホンダのアロンソ!!
18周目、すでに1度目のタイヤ交換を終えていたフェルナンド・アロンソのマクラーレン・ホンダが、グティエレス+ハースに追いつき、追い越しざまに追突した。アロンソは、「スリップから抜けるのがちょっと早かったかも」と反省し、レーシングアクシデントとしておとがめは受けなかったが、激しい事故だった。
グティエレス+ハースの左後輪に右フロントタイヤをぶち当てたアロンソのマクラーレン・ホンダは、その反動ではじき出されてグラベルにひっかかり、ゆっくり半回転しながら数十m先のコンクリートバリアに逆さまに激突した。
何度もリプレイされるビデオを観てその状況が分かったのだが、最初にアクシデントの場面がモニターに映し出された瞬間、血の気が引いた。しかし、直後にマシンの残骸のそばに立っているアロンソにカメラが向けられたのを観て安心した。もし、それがなかったら、心配は半端ではないほどマシンは激しく壊れて見えたからだ。
アロンソは、「テレビで観ているはずの母親が心配しているだろうからできる限り早く出なくちゃと思った」とジョーク交じりに語ったが、足を軽く打撲しただけで、接触したエスティバン・グティエレスと抱き合って無事を喜んだ。
しかし、SNSなどで流れる事故現場の写真に、“こんなに壊れているのによくぞ無事だった”とのコメントがあったが、これは若干お門違い。『破壊とは、衝撃を吸収した結果』だからだ。壊れることでドライバーへの入力が分散される。というか、分散するようにクルマを作っているからだ。市販車もその傾向はもちろんあるが、レーシングカーは、その考え方がさらに高い次元で徹底されて設計される。特に、世界中の衆目にさらされるF1では、それが遥かに高度になわれている。
壊れた写真をみる機会があったら、ドライバーが座るコクピット周辺の状況を観察すると、ドライバーエイドの思想が分かるはずだ。ともあれ、ドライバーが無事だったのはなによりだが、その時、入賞圏内の10番手にいたアロンソのレースはそこで終わった。
◆マクラーレン・ホンダの進化はどれくらいなのか
マクラーレン・ホンダのもう一人、ジェンソン・バトンは完走したが、このアクシデントで提示された赤旗で、ほぼ全員がタイヤ交換を行なったのに対して、赤旗の前にタイヤ交換を予定通りすませていたことで、結局1回多くピットインしたことになり、周回遅れの14位。
長谷川祐介F1プロジェクト総責任は、「マシンの調子は、悪くなかったけれど、結局は結果がすべてですから去年と同じじゃないかと言われても仕方ない。残念です」とコメントした。ただし、去年、お話にならなかったディプロイメント(回生エネルギーの活用)については、ドライバーから問題なしと報告され、「中盤の集団の中に入れていたと思いますので、クルマのパッケージそのものはそんなに悪くなかったということだと思います」として、「今回のデータを取れた中で、もうちょっと改善というか、次のバーレーンに向けて準備をしていけば、それなりのポジションで戦えるかな、と思います」と前向きのコメントで締めくくった。
改めて、Q3進出が当面の目標、というのは正しいコメントだったことが分かる。タラレバを言えば、最初のタイヤ交換をもう少し先のばしにしていれば、アロンソはグティエレス+ハースの直後を走ることもなかったが、超短命なスーパーソフトタイヤでは無理な相談か。そして、マシンの調子は、悪くなく、アロンソは10番手から追い上げの態勢にあった。
◆グロージャン+ハースの驚きのチームデビュー6位!!
アメリカの新チーム『HAAS』に移籍したロメイン・グロージャンが、チームのデビュー戦で6位の大殊勲。その影に、日本人の小松礼雄レースエンジニアがいた。ロメイン・グロージャンが、是非にと声をかけ、ルノーに変身するロータスからハースに移籍した初レースでもあった。
小松礼雄エンジニアのインタビューは後日『F1の中枢で活躍する日本人』でお届けするが、レースを終えて喜びに溢れるチームを訪れる我々の前で盛んにテレながら、喜びのコメント。「新チームの準備に追われて、睡眠時間が欲しいです。あまりのきつさに、辞めて行ったメンバーもいたので、がんばった分だけ嬉しいです」と泣かせるコメントをしみじみと語った。
ちなみに、10位まで『入賞』というが、22台参加で10位を入賞とは、無意味ではないけれど、メーカー参入時代に『入賞』という言葉を報告書にかけるようにしたインフレのサービスとも言える。F1は長い間、6位までが入賞だった歴史がある。その意味でも、新チーム『ハース』の6位は、BAR時代からF1の住人となっている小松礼雄エンジニアの喜びを加速するものだったはずだ。
開幕戦は波瀾の展開だったが、これは、シーズン全体を予測するものだったことを、あとで思い出すはずだ。
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