国産人気SUV(4WD)の長距離走行で分かった5台の違い!
東京にある編集部を出発、雪を探しつつ北上し、福島県・猪苗代を経由して山形県・蔵王まで足を伸ばした。人気企画、全行程800kmにおよぶ雪見を含むロングツーリングを、国産の人気SUV5台を引っ張り出して比較試乗した。
先に伝えておきたいのは、冬期路面環境の道では夏期の路面環境以上にクルマの性能がタイヤの性能で大きく左右されるということ。サマータイヤであればタイヤが鳴くとか滑るといった状況などは異常事態として明確に把握できるし、基本そんな領域を使わない。
また、夏期は燃費に関わる程度にしか扱われない4WDシステムの方式や制御内容が、冬期路面では走行安定性などの結果に大きく関係する。4つのタイヤをどのように駆動させるのか? トラクション性能や走行安定性はどうかなど、スノー路面でこそわかる性能は多いのだ。
スノーツーリングテスト総括
普段よりもハンドルの操作量が多い雪道ドライブでシートの角度調整の大事さを痛感。(とくにアウトランダーとフォレスターがマル)的確に上半身を支えられ、ハンドル操作がラクで疲労度も少ない。また、雪や凍った路面など不安感が漂うなかで、どのように精神的な安心を得られるかも大事であることも痛感した。その理由と、最近は除雪能力も高まり冬期でもドライ路面を走るケースが増えたので、道中の高速走行などの印象も含めてリポートしていこう。
〈ヴェゼル〉
SUVらしくない、まるでワゴンのクロスオーバーのような、運転のしやすさと開放感を高めた印象がマル。包まれ感のあるコクピットと相まって座った瞬間の安心感が高いのが特徴だ。乗り心地には若干の硬さはあるが、左右のロールバランスがよく、旋回中の腰高感が少ないのも好印象だった。雪道ではリヤ駆動をもっと早い段階からさせてほしい印象を得たが、高速や下道の乾燥路ではその分だけ軽快感があり、気持ちよく走れる。雪道は少ししか走らないなら最適といえるモデルだ。
〈CX-3〉
駐車場などでは若干重いと思うハンドル操作感だが、これが道中の運転での安心感に加えて疲労度低減にも大きく関係する。高速道路では路面の変化や横風の影響などへの素早い気付きと対処ができるし、雪道では路面状況を的確につかめる要素になる。トルクフルなディーゼルは高速移動をラクにするのはいうまでもないだろう。気になったのは険しい山道をスポーティに走る場面で、やはり高回転特性の弱いディーゼルが苦手なポイント。高速道路を主体にする人にオススメしたいSUVだ。
〈Xトレイル〉
走行距離が3万kmを超えているためか、ブッシュなどのプルプル振動が若干大きかったのも気になる。これも関係してハンドルからグリップ感など手応えを感じ取りにくい。結果としてスタッドレス特有のグニャとした感覚も相まって直進安定性が悪く感じてしまう。またアクティブライドコントロールで揺れは少ないが、荒れた路面に行った際の突き上げ感が大きめだった。エンジンは力強く加速するのだが、駆動抵抗が大きいのか、CVTのロスがあるのか、車両重量以上に重い感覚が漂うのも気になる。
〈アウトランダーPHEV〉
静かに力強く、滑らかに上質に走る高級車的な感覚は格別だ。バッテリーを床下にバランスよく配置したことで、低重心かつ前後重量バランスを整えたその車体の動きも格別。無駄な前後の揺れも少なく、しなやかな足まわりの味付けで乗り心地を確保しつつ、車線変更やカーブでも安定感がある。また、回生をゼロにするB0モードにすることで、アクセルオフすれば速度がなかなか落ちないため燃費が稼げるのもポイント。
〈フォレスター〉
CVTの完成度が高く、動き出しから力強い加速まで、パワフルでありながら滑らか。ハンドルからの反応が的確で微細なコントロールもしやすく、滑りやすい路面を含めてどれかひとつでもタイヤが路面を捕まえていれば、それを基軸にクルマを安定させる味付けが好印象だ。気になるのは足まわりが若干硬く突き上げ感がある点。フォレスターは降雪環境を走る機会が多い人には、強くおすすめする1台だ。