マクラーレン・ホンダは大躍進!? が、ベンツとフェラーリ2強か？
今週末にメルボルンで2016年Ｆ１グランプリが開幕する。いま最も気になるのは、ホンダがどのくらい進化したかだ。２月22日からと3月1日から、それぞれ4日間にわたって行なわれた合同テストで、マクラーレン･ホンダは去年とは別次元の安定性を見せた。
ジェンソン･バトンとフェルナンド･アロンソは、アロンソが１回目最終日に３周しかか走れないトラブルに見舞われたが、合計で710周を走破した。これはたっぷり10レース分の距離である。メルセデスには遠く及ばないとはいえ、去年、初めて参加したヘレス･サーキットでの３日間の合同テストでは、参加チーム中最低の70周ほどしか走れなかった“惨状”に比べれば、大きな進歩だ。
タイム的にも、アロンソもバトンも1分24秒台を記録した。同じカタルーニャ･サーキットで行なわれたスペインGPに当てはめると、ぬあんと、メルセデスに続く予選３番手と4番手のタイムである!! マクラーレン･ホンダは1年間で3秒近く速くなったのだ。
もっとも、去年のマクラーレン･ホンダは、メルセデスより２秒ほど遅かった。当然、メルセデスだけでなく他チームも、新シーズンに向けて軒並み2秒前後速くなっているから、プラスマイナスで、少なく見積もってもまだたっぷり1秒以上の差があるというのが実態だ。
とはいえ、マクラーレン･ホンダがどれくらい進化したのかが、開幕戦ではっきりするはずだ。まずは安定して走ること、レースをまともに戦うための第一段階に、マクラーレン･ホンダはやっとのことで到達した。
さて、マクラーレン･ホンダと同じくらい興味深いのは、フェラーリの躍進である。8日間のうち５日でトップタイム。セバスチャン･ベッテルもキミ･ライコネンもそろって速い。
一方、【帝王メルセデス】は、8日間でトップは一度しかなかった。これは何を意味しているのだろうか。通常なら、強いチームはテストでも好タイムを記録するものだ。アイルトン･セナとアラン･プロストのコンビで、16戦15勝という凄まじい強さを見せた赤/白のマクラーレン･ホンダは、テスト初日からたを圧するタイムを記録した。2009年、ホンダを買い取る形でタイトルを獲得したブロウンGPも、テストから圧倒的な駿足を見せていた。
そうした実績を観ていると、フェラーリの速さはホンモノ、と思いたいのだ。
1）本当にフェラーリが速いのか。
2）メルセデス･チームは余裕しゃくしゃくなのか。
どっちだろう？
現実的にはたぶん2)だ。しかし、本当かどうかはシーズンが開幕するまでわからない。つまり、1）の可能性もなくはない、ということだ。
いずれにしても、いろいろなことを勝手に考える楽しみが、開幕直前のこの時期にはある。たとえば、こんなことも考えられる。テスト期間中は、車検があるわけでもなく、つまりは、“違反車両”も許される。
本来なら、テストで行なわれるプログラムは、決勝レースを見据えた内容になるはずだ。だが時にはそうでないことも起きる。極端な話、車重を軽くし、燃料を少なくして柔らかいタイヤでアタックすれば、好タイムを記録できる。
なぜそんなことをする? 理由は大きく二つある。ひとつは、スポンサー獲得のための策略（時には謀略＝実際の速さではないものを見せるので）。もう一つは、ライバルへの牽制だ。もしかするとフェラーリは、それを実行したのかもしれないし、逆にメルセデスが、“一発タイムはいつでも出せる”と余裕の姿勢なのかもしれない。
メルセデスは、通常の市販車レベルの内燃機関エンジンでは、燃料が内包しているエネルギーの30％しか有効利用できていないというのが常識だが、メルセデスの2016年型パワーユニットは、高効率を狙ったことで、47％までその効率を高めたと豪語している。
もし、それが本当なら、他のパワーユニットより5％、概ね30?50馬力パワフルということになる。すでに去年の段階から、予選になるとパワーユニットをフルパワー状態にし、耐久性をある意味無視した予選セットにすると、パコッとタイムが上がってポールポジションを連発していた。
今回のテストでは、徹底してロングランを行なったルイス･ハミルトンとニコ・ロズベルグは、それでも１分26秒台を記録したが、去年のレース中の最速タイムは１分28秒台だった。つまり、メルセデ陣営が連日記録した１分26秒台は、今年のスペインGPのレースペースである、ということになる。これはこれで驚くべきハイペースだ。
そして、それはパワーユニットにたっぷり余裕をもたせたセットでの話。予選ではセッティングをパワーよりに振ったモードにする? いずれにしても、フェラーリのスピードが気になり、メルセデスとの闘いが開幕戦の話題の中心だ。
