国産メーカー4社6台のクリーンディーゼル路上走行試験で明暗 (2/2ページ)

路上走行におけるNOx排出量と圧縮比の関係とは?

 もっとも、すでに報道されているように、マツダの2台については、路上走行試験においても、NOxについては規制値である0.08g/kmを、ほとんどのシチュエーションでクリアしたが、それ以外のモデルはいずれも基準値をクリアできたシチュエーションはなく、2?5倍、ときに10倍以上の乖離が認められた。

 台上と路上での差について、2?5倍というのは想定の範囲内であり、10倍を超えるものについても、触媒など部品の保護制御が機能したためと説明がつき、ディフィートデバイスの疑いがあるクルマはなかったというのが、ひとまずの結論だ。

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 さて、この試験結果から、低圧縮ディーゼルにより、そもそものNOx排出量を減らすという選択をとったマツダのアドバンテージが感じられる。実際、路上走行試験の乖離具合と圧縮比には何らかの関係があるように見受けられる。試験車両においてもっとも圧縮比の低い14.0のエンジンを積むCX-5は、都市内・都市間のルートで基準値を下回っている(それでも高速走行ではわずかに基準値を超えている)。

 次に圧縮比が低いのは同じくマツダ・デミオ。こちらの圧縮比は14.8、都市内ルートでのバラつきは確認できるが、やはりほとんどのルートにおいて基準値をクリアした。残る4台はいずれも基準値を超えているが、その中でも台上試験との乖離において突出したルートが存在しないのが、デリカD:5。このエンジンも圧縮比は14.9と低い。一方で、エクストレイルとランドクルーザープラドは15.6という圧縮比で、プラドは後処理に尿素を使うことでNOxを処理するというシステムを載せている。WEB CARTOP

 ちなみに、ハイエースの圧縮比は15.0だが、商用車でありターゲットとなる基準値が異なるため、都市部では乗用系とは桁違いのNOx排出量となっている。ただし、高速の往路についてだけいえば、マツダの2台に次ぐ好データとなる。WEB CARTOP

 こうしたデータの違いが車両の特性によるものなのか、交通状況に影響されているのか判断しづらいのが路上走行試験の難しさといえるだろう。今回の路上走行試験においても、マツダのSKYACTIVディーゼルは2台とも安定してNOx排出量が少ないので、試験環境によらずメカニズムとしてNOx排出量が少ないといえるだろうが、それでも同じルートの往復で数値が1.5倍以上のケースもある(デミオの都市内)。WEB CARTOP

 路上走行は周囲の状況や安全のために必要な急操作もあり得るもの。路上走行試験を規制に取り込む動きもあるが、絶対値として評価するには非常に危ういということも見えてきたといえるだろう。
(画像データ:国交省PDFより)


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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