コスト度外視、明確な目的のため設計されたリヤのサブフレームに萌え〜
ホンダS660の写真を撮るとしたらどこが好き? と言われたら、様々な回答があるだろう。でも、たいていは「全体」とか、「ボディサイドのインテーク」とか「スピードとタコのコンビメーター」「いや、断然リヤのバルジでしょう」といった感じの、いわゆるオモテ側の話になると思う。
だが私(S660&BEAT MAGAZINE編集長)が断然いち押ししたいのは、リヤのサブフレームである。これはそそる。サスペンションアームなどをボディに直付けせず、構造材(サブフレーム)を介して装着すること自体は常套手段だ。しかしS660のそれは超がつくほど大きく、しかし軽量なアルミ製で、それもひとつの型による一発成形(厳密には一部に小パーツを合わせている)だっていうんだからしびれる。

何にしびれるか? もちろんこのサブフレームによって足回り全体の剛性が上がったり、動態でのアーム類の正確な位置決めができるなどのメリットは当然、クルマ学問として押さえておくべき点だ。しかしそれより何より、「目的のために意思を持って設計され」「コストを惜しまず作られた」ということがぱっと見でわかっちゃうくらい、モノとしての出来や存在感が突出していることに感激する。
操安性におけるメリットは明確にわからなくても、このパーツを見たら誰でも「このクルマは相当すごそうだ」って思うはずだ(ちょっとWEB検索してほしいんだけど、普通のクルマ、いや、一般的にスポーツカーと呼ばれているクルマだって小さな鉄板をプレスで凹凸つけただけのものを”サブフレーム”って称して付けてますから。それに比べたらS660のこれがいかに異常かがわかります)。
さて、この原稿でWEB CARTOPからの依頼は「S660のすごさを解説せよ」ということでしたが、えーと、規定の字数まで既に達していますが、サブフレームの話しかしてません。でもこれ、字数が足りないとかではなく、予定通りの展開です。
だってS660のすごいところを「ボディ最高」「デザイン最高」「走りもすごいぜ」「エンジンだって頑張った」って次々と挙げていくと、フリーザ以降の敵が強さのインフレを起こしていった「ドラゴンボール」と同様、すごさに慣れるという恐ろしい事態になってしまうわけで。
そんなことより、ふだんは目にできないけれど、見ようと思えば誰でも見られる部分。それでいて通常は目につかないから手を抜きがちなスポット。そんなところにもめちゃくちゃ手間とコストをかけているのがS660です……って言われたほうが凄さって伝わると思うんですが、どうでしょう?
というわけで、こんな風にS660(とビート)が「なぜ、すごいのか」を納得いく具体例とともにわかっちゃうのがS660&BEAT MAGAZINEです。