ネジ1本からトヨタの規格を変えなければ高級車はできない
パワーユニットとして選ばれたのは、NAの気持ちよさを実現する5リッターのV8エンジン。そしてハイブリッドのイメージを変える3.5リッターのマルチハイブリッドシステム。
「V8はこれまでのハイパフォーマンスカーが持っている、人間の感性に直接訴えてくれる気持ちよさを実現すること。マルチステージ・ハイブリッドは、ハイブリッドをワクワクする走りにする仕組みです。2つの電気モーターを多段の自動変速でコントロールするものです。
エンジニアは極めて複雑なロジックで考えていますが、乗る人には人間の五感が気持ちよく受け止めてくれればいいだけ…」ぼくはこの時、25年も前のデトロイトでのインタビューを思い出していた。レクサスLSの第1号、日本名セルシオを開発したチーフエンジニアの鈴木一郎さんのことだ。
「ネジ1本からトヨタの規格を変えなければ高級車はできない」と情熱一杯に話していた鈴木一郎さんが目指したクルマの進化版が、再び進化を遂げる。あの時の鈴木一郎さんも世界のトップを目指していた。初代レクサスの評判は極めて高く、メルセデス・ベンツも驚いたという。
当時の鈴木一郎さんは町工場の熟練親父の雰囲気だったが、LC500の佐藤さんは大柄でスマート、端正なエリートエンジニア。この対照的なエンジニアが世界のトップを目指す。ここにきて欧州の高性能車がドンドン進化する中にあって、日本車は押され気味。
プレミアムカ―としてブランド作りをやってきたLC500の新たな挑戦に大いに期待したい。