本音を聞きたい、何を言ってもかまいません』と豊田章男社長
「私はかつてGSの担当で、レクサスGSはプロジェクト総力あげて作り込んだハイパフォーマンスなプレミアムカーだと思っていました。ですが、2011年のGSアメリカ発表のときにショックを受けました。それは発表の夜のこと、ジャーナリストを集めたミーティングで『本音を聞きたい、何を言ってもかまいません』と豊田章男社長が言ったことに対し、本気で答えたくれた話しに驚きました。」
「GS開発中に試乗もしてもらった人が、レクサスはBoring(退屈)だと発言したんです。その人は、われわれがあそこまでやっていたのを知りながら、パフォーマンスは高いが退屈なクルマだという…ショックでした。それがきっかけでレクサスを根本から見直そうということになったのです。」
「かなり無理なプロジェクトでしたが、章男社長の情熱とエネルギーに押されてLC500が出来上がったわけです」佐藤チーフエンジニアは筋道立てて、わかりやすく、熱っぽく語る。
「最初のコンセプトカーは、エンジニアとしてみたらとても実現できる形ではなかった。でも評判がいいので挑戦してみよう、ということになった。あのままではエンジンはフードから飛び出すし、サスペンションは収まらない…そんなコンセプトカーでしたから」カリフォルニアにあるトヨタのデザインセンター「キャルティ」の提案したコンセプトカーLF-LCのことだ。
デザイン的には極めて評価が高かった。その実現のため、全く新しいFRプラットフォームを作ることからLC500 プロジェクトがスタートした。かつてソアラから始まった高級車作りはレクサスSCへ進化。そのフルモデルチェンジ版がLC500。新世代のレクサスのブランドを象徴するクルマを作る、そのチーフエンジニアに指名されたのが佐藤さんだ。
世界のトップブランドへの果敢な挑戦。アメリカのジャーナリストからBoringと言われたことが、燃えあがるような情熱の根源になっているようだ。「LA(ロサンゼルス)郊外のワインディングや自分でサーキットを思い切り走って、素晴らしい海岸マリブの海を眺めながらコーヒーを飲む。そのためには本当に気持ちのいい走りを持つクルマがいる。そんなイメージにあう高性能なラグジュアリ―・クーペを目指しました」
マリブ海岸近くのサンタモニカ山脈には、高速で駆け抜けることができるワインディングがある。箱根のワインディングを10倍くらいにした規模の素晴らしいロードは、腕と高性能なスポーツカーあれば、かなりのスピードで駆け抜けることができる。