ターボエンジン技術はレーシングスポーツカーで開発 Alpine-Renault A442B/A441
ルノーのモータースポーツを統括するルノー・スポールが設立されたのは1973年。ルノーのロードモデルをベースに市販スポーツカーやレーシングカーを製作していたアルピーヌを買収、系列子会社として再出発させたのだ。そのルノー・スポールの最初の大きな仕事がグループ5のレーシングスポーツカー、A440の開発だった。300番台はF2やF3のシングルシーターで、A440はA220の後継モデルだが、クローズドボディからオープンシーターに変更され、エンジンも3リッターV8から2リッターV6にコンバートされていた。そのV6エンジンにターボを組み込んだモデルがA442。ル・マンに初御目見えとなった76年にいきなりポールを奪い、さらに2年後には念願だったル・マン初制覇を成し遂げている。ブルーのボディの#26号車は75年仕様でNAを搭載したA441。ルノー・カラーのマスタード・イエローに塗られた#3号車は78年ル・マンに参戦したA442Aだが、ルーフの整流カバーは同年のウィナー、A442Bに装着されていたノンオリジナル。A441は2015年のレトロ・モビルで撮影。A442Aはミュルーズのフランス国立自動車博物館、通称「シュルンプ・コレクション」で、こちらは2010年に撮影。
耐久レースで磨いたターボ技術の闘いの場をF1の舞台へ移す Renault Formula 1 RS10/RE40
ル・マン24時間レースを初制覇した1978年限りでルノー・スポールはスポーツカーレースから撤退。79年からはF1GPに専念することになった。実戦デビューは、スポーツカーレースと並行して進められていた77年のイギリスGP。マシンのRS01は、アルミ製のツインチューブ・モノコックに1.5リッターまで排気量ダウンしたV6エンジンを搭載していた。F1GPにおいて、スーパーチャージャーを使った過給エンジンはかつて存在していたが、ターボによる過給エンジンはこれが初。熟成に手間取ったものの2年目に初入賞、3シーズン目にはポールを奪うまでになった。その79年の中盤にデビューした後継マシンがRS10。デビュー4戦目となるシリーズ第8戦、凱旋レースとなるフランスGPで初優勝を飾っている。これはルノーにとってだけでなく、ターボエンジンにとっても記念すべき初優勝だった。80年のRE20、81年中盤からのRE30を経て83年にデビューしたRE40では、ルノーF1として初のカーボンモノコックを採用している。U字型のウィングステーが特徴的なリアビューを持つ#16の79年仕様RS10はルノ・コレクションの車両で、モデナのエンツォ・フェラーリ博物館で2013年暮れの企画展で撮影。#15の83年仕様RE40はパリ市内にある国立工芸院付属パリ工芸技術博物館にて12年に撮影。
耐久やF1レースで鍛えたターボ技術を市販車にフィードバック Renault 5 Turbo
1979年にRS10が、フランスGPで初優勝を飾ると、翌80年にはターボを装着した市販のロードゴーイングモデルがリリースされた。ルノー5はコンパクトクラスで傑作のひとつとされている、そのルノー5のホットモデル、ルノー5アルピーヌをベースにしたルノー5アルピーヌ・ターボだ。本来ベーシックなモデルでは800cc/36馬力だったものがアルピーヌでは1.4リッター/93馬力にアップされていたが、ターボ仕様ではさらに110馬力にまで引き上げられていた。しかしそこで収まらないのは世の常で、ラリーのグループBを見越してパワーユニットを180度回転させドライバーの背後に押し込んだ、MRレイアウトの2シーター、5ターボが投入された。外観では前後のオーバーフェンダーが目立つ程度だが、その中身はまさに別物。そしてグループBのWRCマシンに生まれ変わった5ターボはメジャーデビューとなった81年シーズンの開幕戦、モンテカルロ・ラリーで見事初優勝。
★世界最強のV10エンジン★ Renault Pneumatics Engine
F1GPにターボエンジンを持ち込んだパイオニアのルノーは、1985年シーズンを限りにコンストラクターとしての活動を休止。エンジンサプライヤーとしての活動も翌86年を限りに休止していたが、レギュレーションによってターボが禁止され、3.5リッターNA(自然吸気)に一本化されることになった89年シーズンに、エンジンサプライヤーとしてF1復帰を果たしている。用意したエンジンはV型10気筒。振動の問題から、F1GPではそれまでどこも手を出していなかったレイアウトで、より高回転化を狙うならV12が有利だったし、より軽量・コンパクトを望むならV8。これが定説だったがホンダとともにルノーはこれに挑戦したのだ。ルノーのもう一つの武器はニューマチック・バルブ(Pneumatics?Valve)。