低速車の待避や合流をなくすことで安全性向上
NEXCOによると、交通集中渋滞の原因の第1位は「サグ部・上り坂」(約58%)。要するに、上り坂での速度低下が諸悪の根源としている。そこで、NEXCO中日本では、中央道(下り)の多治見ICから小牧東IC間の登坂車線区間約3.7kmで、現在の登坂車線方式から右側付加車線方式への変更を試行すると発表があった。
これまで上り坂が長く続く区間では、左側に登坂車線が1本増えて、トレーラーなど低速車両が車線を譲る形で、全体の速度低下を防ぐという発想だった。これに対し新しい試みでは、登坂車線を廃止する代わりに、右側に追い越し車線を加線するというもの。
HPには「これは、国家公安委員会委員長(当時)主催による「交通事故抑止に資する取締り・速度規制等の在り方に関する懇談会」で、2013年12月にとりまとめられた提言を受けて、登坂車線の合理的な運用を目指し、警察・国土交通省との検討、関係機関との協議を重ねた結果、本区間において試行することとなったものです」とある。
事業概要については、「従来の登坂車線方式は、速度があまりでない大型車などが走行車線の左側に設けた登坂車線に移行し、坂を登り切ったところで再度走行車線に復帰する構造であり、低速車に待避していただくことで、交通流をさまたげない効果を期待するものです。
今回試行する右側付加車線方式は、比較的速度に自由度のある車両が第二走行車線の右側に設ける追い越し車線を利用して自ら追い抜く方式であり、低速車の待避や合流をなくすことで、安全性の向上を目指すものです」と説明されている。
ドライバーとして、大歓迎できる試みで、試行などと言わず、全国一斉、国内すべての登坂車線をこの右側付加車線方式へ即日変更してもらいたいというのが、ドライバーの本音ではなかろうか。
そもそも、低速車は機動性が悪いからこそ遅いわけで、その機動性の悪いクルマが、道を譲るという発想が根本的に間違っている。
同様に、高速道路始点・終点の規模の大きな料金所(例 東名高速 東京料金所、関越道 練馬料金所など)も、本線から左の方向にたくさんのゲートが広がっていくレイアウトになっているが、本線を一度左に振って、右側にゲートが広がるように配置するだけで、かなり流れが良くなるはず。
交通容量(道路のキャパシティ)を計算するだけでなく、もっと『人間通』にならないと……。渋滞解消のためにも、交通安全のためにも、一番肝心なのは、人とクルマ、とくにドライバーのストレスをいかに軽減するかに尽きる。
道路交通法も、「安全で円滑な交通を確保することを目的」に作られたことになっているが、もっと「円滑」というところに力を入れて、心理的・生理的にストレスを感じない交通環境整備に本腰を入れており組んでもらいたい。
なお、中央道 多治見IC~小牧東IC間の右側付加車線方式の運用開始日時については、いまのところ未定で、決定次第NEXCO中日本から発表される。
(文:藤田竜太)