ミドシップ4WDのマシンがグループBスタンダードに
ルネ・ボネ/マトラがジェットで先鞭をつけ、M530では実際にラリーフィールドにも持ち込んでいたミッドシップの後輪駆動=MRレイアウトは、その後ランチャがストラトスで圧倒的なアドバンテージを証明しいた。そこで、当のランチアは後継モデルとなる037ラリーを投入したが、その一方でアウディが先鞭をつけたAWD=全輪駆動の優位性も捨て難かった。だから必然的にMRとAWDを併せ持つことが、グループBによるラリーでは必須条件となっていく。その多くは前輪駆動のエンジンとミッションをキャビンの後部に移し、さらに駆動系にセンターデフとプロペラシャフトを追加、前輪をも駆動するよう改造されラリーマシンに変身していた。
速いマシンは美しく映るが、最初から美しくて速かった
1983_Lancia Rally 037 Martini Works-machine
ストラトスに替わる戦略車、グループBラリーカーとして開発されたクルマがランチャ・ラリー037。ベースとなったのはランチア・ベータ・モンテカルロで、キャビン部分のメインモノコックを流用し、前後に鋼で組んだスペースフレームを追加した、まるでレースマシンのようなパッケージとなった。
FWDのスーパーミニからMRのスーパーマシンに大変貌
1983 Renault 5 Turbo“Tour de Corse”
1972年に発売された前輪駆動のコンパクトカー、ルノー5(サンク)をベースに、エンジン+ミッションをキャビン後方に搭載したクルマがルノー5ターボ。
82年のツール・ド・コルスと86年のポルトガルでも優勝し、さらに85年のツール・ド・コルスでは発展モデルのルノー5マキシターボが優勝を飾っている。深紅の5ターボ・ロードゴーイングはフランス北西部、ロエアックのマノワール自動車博物館で2012年に撮影。一方、マスタードイエローのWRCマシンはミュルーズの国立自動車博物館で10年に撮影した83年のツール・ド・コルス仕様。
メーカーの合従連衡の波に呑まれた悲運のマシン
1983 Talbot Horizon Groupe B
20世紀初頭に設立された、フランスのクレメント・バイヤード車の輸入会社を起源とする長い歴史を持ったタルボ・ブランドは、第二次世界大戦前後に様々な紆余曲折から所有権が二転三転。1958年にはシムカに買収されたが、67年にはシムカそのものがクライスラーに買収されてクライスラー・フランス傘下に。
しかしPSA傘下となりラリー活動もプジョー・スポールが主導、84年に登場するプジョー205ターボ16に一本化され、結局プロトタイプのまま実戦デビューを果たすことなくお蔵入りとなった悲運のマシンだ。ベースモデルのオリゾンGLSとグループBの試作モデルともにパリ郊外のアヴァンチュール・オートコレクション・ポワシーで撮影。
グループBマシンの代名詞的存在となったスーパーマシンの真打
1984 Peugeot Type 205 Turbo 16
MR+AWD、そしてターボエンジンが必須となったグループBによるWRCで、まさに真打ちとして1984年に登場した最強マシンがプジョー205ターボ16だ。