ル・マン24時間とF1GPで初めて勝ったターボエンジンはルノー!
近年のダウンサイジングターボのトレンドは、燃費を無視したハイパフォーマンスのための技術というイメージから、ハイブリッドシステムのライバルというキャラクターへ過給エンジンを変化させているかもしれない。しかし、そもそもターボエンジンというのは、様々な意味でダウンサイジング指向ではあった。
モータースポーツの現場で使われ始めたときも、マルチシリンダー(8気筒以上)のNAエンジンに対する4L6気筒ターボは、パワーユニットをコンパクトにできるという点において、パッケージングにおける革新の萌芽となった。1970年代のモータースポーツから始まったターボエンジンのトレンドは、とくに現代のハイパフォーマンスモデルに顕著に受け継がれている。いまやNAエンジンでパフォーマンスを追及しようというブランドは、こと自動車の正しい姿を提示する欧州車においては、ほとんどない。つまり過給エンジンこそ、現代における模範解答といえる。
ル・マン24時間で勝ったノウハウをつぎ込み、F1エンジンに革命を起こしたルノーの1500ccのV6ターボエンジン、EF1型
J-P・ジャブイユが操り、ターボエンジン初のF1優勝となったルノーRS10。1979年の地元フランスグランプリでのことだった
画像はこちら また、市販車についていえば、ハイパフォーマンスカー=大排気量車という図式を覆すことになる。大柄なクーペやセダンボディをベースとしたハイパフォーマンスカーであれば多気筒・大排気量エンジンを積むことのデメリットは比較的少ないが、物理的に積めないサイズの車体ではターボによる性能アップは唯一といっていい手法となる。前輪駆動のハッチバックベースとなると大排気量エンジンの搭載はフロントヘビーな重量配分となりがちで、過給機によりモアパワーを実現することはパッケージングの面からも理に適っている。
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2016年シーズンから久々にF1コンストラクターとしてF1GPシーンに姿を見せることになったルノー では、走る実験室とも呼ばれるモータースポーツからのフィードバックによって生み出された市販ターボエンジンといえば何があるだろう。ポルシェやホンダ、メルセデスといったブランドが思い浮かぶかもしれないが、やはり歴史の長さとモーターと市販エンジンのシンクロ性を考えれば、ルノー「F4R」エンジンが最有力といえる。FF最速というテーマを世界中の自動車メーカーに提示したメガーヌ ルノー・スポールの心臓部である、この2.0リッター4気筒ターボエンジンの鼓動は、モータースポーツで鍛え上げられたテクノロジーに裏付けられている。燃費性能をアピールするダウンサイジングターボエンジンの発展形ではなく、あくまでもハイパフォーマンスを目指した技術からのフィードバックである点は、ルノーのターボエンジンに共通している特徴。そうしたルノーらしさはルーテシアに搭載される0.9リッター3気筒ターボでも感じることができるのだ。
くしくも、2016年は12回のF1コンストラクターズチャンピオンに輝きF1で活躍してきたルノーが、コンストラクターとしてワークス参戦を再開する。F1直系といえるルノーのターボエンジンを味わうのに、いまこそベストタイミングなのは間違いない。