サイドブレーキを備えるフォレスターXTがベストチョイス!
スバルのAWDオールラインナップ雪上試乗会が、北海道の新千歳モーターランドにて開催された。インプレッサからレガシィまで、ほとんどのAWD(四輪駆動)モデルを、一日で堪能できるというプログラムは、クローズドコースからオープンロードまで様々なシチュエーションで、スバルAWDの安定感を確認できるもので、車種による走破性や違いを感じさせてくれる貴重な機会にもなった。ちなみに、スタッドレスタイヤは全車ともブリヂストンのブリザック(乗用タイプはVRX、SUVはサイズによってDM-V2)を履いていたので、タイヤによる違いはないといえる。
今回、ビスカスLSDをセンターデフに使うMT車専用のシンプルなAWDは用意されていなかったが、VTD(バリアブルトルクディストリビューション)AWD、ACT(アクティブトルクスプリット)型、そしてWRX STI専用といえるDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)という3方式のAWDシステムを味わうことができた。
大きく分けると、前寄りの駆動配分を基本としているのがACT型で、VTD-AWDとDCCDはリア寄りの駆動配分となっている。ドライ路面では後者のほうがハンドリング面で有利というのが通説であり、また開発エンジニアもその点をアピールしているが、雪上での印象は、そうしたドライ路面での楽しさとは異なるものだった。たしかに超スリッピーなアイスバーンにおいて、もっともステアリングインフォメーションがあったのはWRX STIだったが、それはAWDシステムではなく、シャーシの優位性によるものだろう。
そう、スバルがラインナップするAWD方式の中で、雪上で乗りやすく、気軽に楽しめるのはACT型だったと感じたのだった。いまやフラッグシップモデルであるレガシィ系にも採用されているACT型は、油圧多板クラッチによって前後駆動トルク配分をフレキシブルに変えるもの。レガシィやフォレスターといったモデルに搭載できるだけの容量を持つので、他の方式に対してトルク配分能力という点では見劣りすることはないという。そもそもは前輪駆動を基本としたシステムだが、スタンバイ4WDのような容量不足感はないというわけだ。
しかも最新世代のACT型では、VDC(ビークルダイナミクスコントロール)で使っている各種センサーからの信号を制御に取り込んでいる。つまり、ステアリング角、ヨーレート、加速度などを考慮して、トルク配分を行なっている。それが安定化方向だけでないのがスバルらしいところ。アウトバックにしろ、フォレスターにしろ、ステアリングを切り込みながらアクセルペダルを踏み込むと、後輪の駆動力によってヨーを生み出すようにトルクが伝わっているのが確認できた。フロントがスリップしてアンダーステア状態になってしまっても、後輪でヨーを出すというでコントロール幅を残しているのだ。もし、アンダーステアで、後輪もトラクションコントロールなどで駆動を抑えてしまうと、どうにもヨーを生み出すことができず、そのままアウト側に向かってしまう。仮に外側が壁で、内側にスペースがあるなら、スピンさせたほうが安全というシチュエーションもあるが、そうしたときにアクセルペダルを踏み込むことでオーバーステアに持ち込むことができるといった制御を、ACT型は実現している。実際、それは開発段階で意識していることなのだという。
そうなると、エンジンが発揮できる最大トルクが大きいほどコントロールできる可能性は広がるともいえる。スリッピーな路面では穏やかなパワーのほうが扱いやすいのは確かだが、深い雪を蹴散らすようなシーンでは、やはりターボエンジンのトルクは有利。さらに、減速しながらヨーを生み出したいシーンではパーキングブレーキを任意に利用できるサイドブレーキ・タイプであるとありがたい。
というわけでACT型のシンメトリカルAWDを採用するスバル・ラインナップの中で上記の条件を満たすのは……フォレスターXTにほかならない。しかも、フォレスターには、走破性を高める電子制御「X-MODE」を備えている。あくまで仮の話としてしておきたいが、雪深いエリアに入ってしまったときの脱出もアシストしてくれ、安心して走れるのであった。
スバルのAWDは、素晴らしい!
[関連記事]