「世界一の高性能コンパクトカー大賞」をCT本誌とWCTから送りたい!
2015-16年の日本カー・オブ・ザ・イヤーは「新世代オープンスポーツ一カー一騎打ち」と予想された。得票はマツダロードスターの442点に対して、ホンダS660が401点という接戦だったが、S660は獲って当然とも思える部門賞すら逃してしまった。
さまざまの2015年イヤーカー戦に敗れてしまったS660だが、調べてみると現代的なウェブの世界では、ヤフーのプロダクトカテゴリー検索大賞を獲得していた。インターネットの検索サイトでは、ヤフーだけでなくグーグルでもクルマ部門のトップクラスにランクインされているはずだ。わがWEB CARTOPでも、検索件数はシビックタイプRとともにトップを争う人気車種だ。
S660の開発はホンダらしいユニークな「人選び」からスタートしている。本田技術研究所50年を記念する行事の一つ、社内新商品企画提案コンテストで、軽のミッドシップ・スポーツを提案した20代の若きエンジニアに開発のリ?ダ?(LPL)をまかせた。
1988年生まれ、入社4年目のモデラー部門で働く椋本陵さんが史上最年少の開発リーダーに選ばれたのだ。工業高校からホンダに入社して4年目の青年に、新型スポーツカーの開発を任せるホンダの英断に驚くが、その結果、世界に誇れる小排気量のミッドシップスポーツカーが誕生した。
日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考舞台裏ではこんなこともささやかれていた。
「S660は、660ccの特殊な日本マーケットのクルマだ。日本のイヤーカーは世界に通用するクルマがふさわしいのでは?」
この考えは間違っている。日本のオリジナリティ溢れるクルマはなにか、という見方ができないものか。先に破談したスズキとフォルクスワーゲンの提携話でわかったのは、フォルクスワーゲンがスズキのスモールカー作りの技術が欲しかったのだ、ということだった。
世界は今、ダウンサイジングに向かっている。エネルギー枯渇への対策、排気ガス問題解決には、軽い重量の軽自動車クラス、あるいは軽より小さなスモールモビリティが必然。小さくても高性能な走りと安全性を備えたクルマ。それこそ軽のスポーツカー作りに凝縮されているテクノロジーだ。イヤーカーを受賞したマツダロードスターには拍手を惜しまないが、ホンダS660がこれから果たす役割は大きい。軽量化技術を低価格で追求したスズキのアルトも世界の最先端を行くコンセプトだ。
今回は無冠の帝王となったホンダS660に、わがカートップから「世界一の高性能コンパクトカー大賞」を贈りたい。