ル・マンの熱気、再び日本でも
1990年代の混迷の時期を過ぎると、スポーツカーレースは、ある一点に向けて収束していった。いつの時代にもスポーツカーレースのトップ“ブランド”となっているル・マン24時間レース…正確には、それを主催するフランス西部自動車クラブ(ACO)にFIAがすり寄っていき、そのパッケージで世界耐久選手権(WEC)が復活したのだ。グループCの時代から参戦してきたトヨタと、プライベーターながらレギュラー参戦で頑張ってきた童夢に加えて、ブランニューのパッケージで参戦を始めた日産…残念ながら2016年は欠場と決まった…と、北米のLMP2で力をつけてきたマツダ。彼らの参戦も期待されるようになり、ル・マンは一層喧しくなりそうだ。
★ル・マンに復帰したトヨタの新兵器★
2013 Toyota TS030 HYBRID #8
F1GP活動を休止したトヨタ/TMGが、ル・マン参戦に向けて新たに開発したLMP(ル・マン・プロト)1カーがTS030 HYBRID。1998~99年とル・マンを戦ったTS020の後継。車両規則の変更に合わせて3.4リッターのV8エンジンを新開発、トヨタお得意のハイブリッドシステムもレース専用のTHS-R(TOYOTA Hybrid System – Racing)が新たに開発されて組み込まれた、ハイブリッドカーへとコンバートされている。2012年のル・マン24時間レースにデビューし、決勝レースでは一時トップを快走する活躍を見せた。3戦目のブラジルで初優勝を飾るとシリーズ終盤の富士と上海で2連勝しシリーズ2位に。翌13年も2勝してランク2位につけている。写真は2013年仕様の8号車で、2015年の富士6時間の際にスタンド裏で展開していたトヨタのブースで撮影。
★目標の一つだったワールドタイトルを手に入れた★
2014 Toyota TS040 HYBRID #8
TS030 HYBRIDの後継モデルとして2014年にデビューしたトヨタのLMP1カーがTS040 HYBRID。前作との違いはエンジン排気量が3.4リッターから3.7リッターに拡大され最高出力も520馬力までパワーアップ。さらにエネルギー回生で得た電気によって、これまでは後輪のみを駆動していたが、前輪もモーターで駆動する4輪駆動となったこと。デビュー戦となった14年の開幕戦、シルバーストンではポールポジションから荒れたレースを逃げ切ってデビューレースウィン。続く第2戦のスパ-フランコルシャンでも勝って開幕2連勝。最大の目標だったル・マン制覇はならなかったが富士、上海、バーレーンと3連勝を飾り目標だった世界選手権タイトルを奪取した。#8は2014年仕様、#1は15年仕様で、ともに2015年のTOYOTA GAZOO Racing FESTIVALにて撮影。
★これまでの常識を超越した異次元のレースカー★
2012 Delta Wing・Nissan/2013 Delta Wing Nissan
そもそもはインディカーの新型車両としてスタートしたプロジェクトに、日産がスポンサードして完成したマシンがデルタウイング・日産。極端に細いフロントタイヤが最大の特徴で、日産ジューク用をベースとした1.6リッター直4直噴ターボ・エンジンを搭載。2012年にガレージ56…新技術を使ったマシンの出場枠を使ってル・マン24時間レースに参戦した。LMP2クラスの中団につけていながらアクシデントでリタイアとなった。その後、13年にはクローズドボディのデルタウイング・クーペにコンバート。他に先駆けて電動化を進めていた日産らしく、この新型クーペではレーシング・ハイブリッドに進化していたが、こちらは実戦参加することはなかった。#0の12年型は同年のル・マンで、ゼッケンのない白いクーペは翌13年の富士1000km時のPRイベントで撮影。
★コンストラクターとしての本領発揮★
2012 Dome S102.5・Judd LMP2 Prototype Racingcar
1979年、童夢-零RLでル・マン24時間に初参戦を果たした童夢は、以来80年代終盤までレギュラー参戦。90年代には休止していたが2001年にLMPカーの童夢S101を開発、カスタマーチームとジョイントしてル・マンに復帰。S101はオープントップだったが、アップデートを続け12年にはクローズドクーペのS102.5に進化。エンジンはジャッド製の3.4リッターV8を搭載し世界耐久選手権の第2戦・スパ-フランコルシャン6時間でデビュー。ル・マンはリタイアに終わっている。15年秋に、ル・マン24時間レースを統括するACOからLMP3クラスのシャシーコンストラクター5社のうち1社に認定され、コンストラクターとしての新たな展開が期待されている。写真は12年シーズン用のS102.5で、現在は米原市にある童夢の旧本社/仮本社のロビーに展示されている。
画像はこちら ★国産唯一のル・マン覇者に、期待は膨らむ★
2014 Mazda LMP2 Skyactiv-D
国産メーカーとして初めて、そして現在まで唯一のル・マン制覇を成し遂げたマツダは近年、Skyactiv-Dの名称でクリーン・ディーゼル(2.2リッター直4直噴ターボ)を開発。それを500馬力にまでパワーアップしたエンジンを搭載したマツダLMP2 Skyactiv-Dレーシング…シャシーはローラB08/60で3シーズンにわたってアメリカン・ル・マン・シリーズに参戦、ディーゼル・エンジンのモータースポーツへの可能性をアピールしていた。このプロジェクトは2015年シーズンで終えているが次なるステージとしてはLMP2のままル・マン24時間に参戦、あるいはこのエンジンを搭載した新型GTマシンの登場から、果てはLMP1にステップアップしてル・マンを含むWECに参戦、と期待はどこまでも膨らんでいく。写真は2015年の東京オートサロンに展示されたもの。
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