ターボ&DCTの搭載は、日本市場へのハイスピード対応か!?
では、走りはどのような違いがあるのか? 0.9Lターボのゼンは一般道で普通に使う分にはまったく問題ないパフォーマンスだが、高速での追い越しやワインディングなどではちょっと足りないと思うかもしれない。ただ、MTを駆使してパワーバンドを上手に使った走りを心がければ、スペック以上に活発に走れる。そういう意味では、クルマ任せではなくドライバーの操作でカバーしてエンジンのパフォーマンスを生かすという点で、マツダ・ロードスターに通ずる部分もある。
それに対してRSはゼンの倍以上のスペックに加え、2ペダルのためイージードライブ。RSドライブがノーマルモードだと「RSも甘口になったな」というくらい穏やかな性格だ。普通に乗っているとゼンよりもスポーツ度は少なく感じるかも!? ただ、これは仮の姿でスポーツ/レースモードにすると、現在では数少ない〝本気〞のターボに変貌する。ただ、かつてのホットハッチのようなジャジャ馬という感じではなく調教されたサラブレッドという感じだ。
この2台のフットワークは別物といっていい。ゼンはサイズを感じさせないフラットな乗り心地と直進安定性に、ベーシックグレードを感じさせない。ライバル車に比べれば、ロール量は大きいが、ロールを上手に制御しているので、コーナリングの安心感は非常に高い。サスペンションは何の変哲もないストラット/トーションビームでもここまでできるのか、と。このあたりも新型ロードスターに通じる部分かもしれない。
それに対してRSはシャープでダイレクトなハンドリングだ。FFなのにここまでアンダー知らずで、針の穴を通すようなコントロール性の高さに、EK9型のシビック・タイプRが正常進化したらこういうクルマになったのかな、と。もちろん、サーキット走行まで許容するシャシーカップは、フランス車をイメージして乗ると、予想以上にハードな乗り味である。ただ、すごいなと思うのは快適性をもたせていること。これはハイスピードでもドライブミスをさせない懐の深さの副産物だと思っている。
スポーツモデルにしてはセンター付近がいい意味でダルさをもたせたステアフィールにも同じ印象だが、ターボエンジンや2ペダルMTも含め、RSは軟弱になったのではなく、サーキットのようなハイスピードステージに照準を合わせた結果と考える。見せ掛けだけのクイックさやスポーツ性ではなく、本質を突いた仕様と感じた。
かつては「日本車のスポーツハッチに比べて、輸入車のスポーツハッチは軟弱なモデルが多い」といわれたが、その考えは改めたほうがいい。今は輸入車でも積極的にサーキット走行を楽しめる時代だ。そんな素性をルノースポールは備えている。
〈スペック〉
車名 | ルーテシア | ルーテシア |
グレード | ゼン0.9L | ルノー・スポール シャシーカップ |
全長×全幅×全高 (mm) | 4095×1750×1445 | 4105×1750×1435 |
ホイールベース (mm) | 2600 | 2600 |
車両重量 (kg) | 1130 | 1280 |
パワーユニットタイプ | 直列3気筒DOHCターボ | 直列4気筒DOHCターボ |
排気量 (cc) | 897 | 1618 |
最高出力 (ps/rpm) | 90/5250 | 200/6000 |
最大トルク (Nm/rpm) | 13.8/2500 | 24.5/1750 |
駆動方式 | FF | FF |
トランスミッション | 5速MT | 6速DCT |
JC08モード燃費 (km/L) | – | – |
価格 (万円・税込) | 208 | 317.8 |
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