今回の4台のなかでは、RC Fがもっとも乗用車的なスタイリング
だがもっとも「今のうちに愉しんでおけ」指数の高いモデルがレクサスRC Fだ。視界、サイズ感、乗り心地、操作フィール、すべてにおいて街乗りでは極めて乗用車的で落ち着いて乗れる。そのくせ、解き放てばライバルに負けない一流のパフォーマンスを見せつける、という点で、もっとも「身近」な存在である。
乗用車的な乗り味では、BMW M6はRC F以上である。そもそも6シリーズといえば、スポーツカーというより高級GTで、歴代M6にしてもリアルスポーツというよりは純然たるGTカーだった。現行のM6も当然、軸足をGTにおく。それゆえに攻め込んだときにみせる一流スポーツカー級のハンドリングパフォーマンスに感激。もっとも実用的で、望めばトップクラスの刺激も手に入る、このギャップが人を喜ばせるというわけだ。M6は。いかにも現代的なV8GTスポーツカーだ。
残る2台、アメリカとイギリスの対決は、完全にリアルスポーツカーフィールドである。スーパーチャージドV8搭載の2シータースポーツであるのは同じだが、キャラクターはまるで違った。
狂気をたやすく感じさせたのは、アメリカンモンスターではなく、ジャガーFタイプRクーペだった。そもそもV6搭載をメインに考えられ非常にバランスのいいFRスポーツカーのRだが、大排気量のしかも過給器付きハイパワーエンジンを積んで、シャーシとのバランスをやや崩してみせたところに「R」の面白味があった。
もちろん、コントロールを失っするほどの狂気は現代のクルマには許されない。電子制御の箍(たが)もしっかりとハマっている。が少しでも中途ハンパな状態で不用意に踏み込めば、オシリはいとも簡単に踊りだそうとする。ドキドキ&ハラハラ度では、その流麗なクーペフォルムに上質でムーディなインテリア、そして少々下品な爆音仕掛け(ちょっとやりすぎか)と相まって、ジャガーFタイプが最右翼かも知れない。
一方のシボレーコルベットZ06(Z07パフォーマンスパッケージ付き)はどうか。派手すぎるいかにもアメリカンな外観のイメージからは想像し難いが、ボディもシャーシもビッグパワー&トルクに十分耐えうる設計になっている。スポーツカーとして非常にポテンシャルは高く従来のアメリカンマッスルのイメージとはまったく違って、サーキットでも超一流だ。イタリアの12気筒モデルにも負けないパフォーマンスがドライバーの腕次第で引き出される。FRのスポーツカーとしては、世界最高峰に位置する1台だ。
今回の4台のなかから、純粋に性能で1台を選べと言われれば、躊うことなくコルベットのZ06(パフォーマンスPKG)を選ぶ。オーバー600psに慣れ親しんだ日本のスーパーカー乗りたちも大いに関心を寄せている1台だ。どれか1台しばらく愛用しろと言われれば、コルベットと悩んだ挙げ句にM6を指命する。M6の目立たぬ雰囲気と気軽に転がせる実用性の高さ、ターボでありながらも滑らかで右足の裏が心地よいエンジンフィール、そして何といっても奥深いハンドリングの妙が、所有欲を刺激するからだ。連れて歩くだけならFタイプやコルベットもいいけれど、飽きずに付き合えるのはRC FかM6。M6に食指が動くとすれば大人びた雰囲気のある分だろう。
〈インテリア〉
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