丈夫で長寿命という副次的メリットも期待できる
さて、前置きが長くなったが、現在ミシュランとトーヨータイヤが、それぞれ実用化に向けて研究・開発を進めているのがエアレスタイヤだ。
ミシュランのエアレスタイヤは「Uptis」とネーミングされ、従来のタイヤのように、タイヤを支える張力に封入気体を使わず、内部に設けたゴムまたは樹脂製の支柱に張力を受け持たせ、封入空気と同じ「バネ」としての効果を得る方式としたものだ。
もちろん、気体を封入する構造ではないのでパンクやバーストはあり得ず、トレッド面が異物を踏んで破損(釘踏みのような例)した場合でも、破損前と破損後でハンドリングが変わることもなく、タイヤの機能不全によってコントロールが失われるようなこともない。
懸念されるのは、タイヤ内部に構造体を設けることでのタイヤの重量増、これに伴う運動性能や乗り心地の悪化だが、重量は従来型の7〜8%増という状態らしいので、それほど問題視される要素でもなく、研究・開発を続けることで軽量化が進められることも十分想定され、目標としている2024年の実用化が待ち望まれる状況となっている。
また、ミシュランによれば、現行のタイヤと較べて構造体としてはるかに堅牢、しかも長寿命性(ロングライフ性)、低転がり性と優位な点がいくつかあるというので、実用化されればそのメリットは大きいことになる。
一方、日本のトーヨータイヤも、すでにエアレスタイヤの開発に着手している。「ノアイア」とネーミングされたプロジェクトで、具体的な内部構造はミシュランとは異なるものの、封入気体の代わりに樹脂製スポークを設け、これが荷重を支えることでタイヤの機能を果たそうとする基本原理は同じだ。
ただ、トーヨータイヤの発表によれば、当初の楕円形スポーク形状からX字型スポーク構造に変更し、さらにスポーク本数を倍増したことによって、耐久性や発生騒音に対して劇的な進化を見せたという。
ミシュランとトーヨータイヤが進めるエアレスタイヤのプロジェクトだが、130年来続いてきた「タイヤは気体封入構造」という概念を根底から覆す発想で、実用化されればタイヤを利用する乗り物に新たな付加価値を創出することになりそうだ。